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改正後の著作権法第113条第5項ただし書における対象レコードの適用期間の限定は、関係権利者の利益の確保を図りつつも、ある程度国内市場が安定期に
入った後は還流レコードの流通を原則どおり自由に戻すことで、関係事業者や消費者の利益との調和を図るという、関係当事者間における利益のバランスを図る
観点を基本としつつ、音楽レコードの国内市場における商秩序を保護するものであり、音楽レコードの国内市場における流通期間や、相当の売上げが期待される
期間を総合的に勘案して検討することが適切であると考えられます。
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まず、一般的に音楽レコードが国内市場において流通していると推定される期間としては、2000年から2002年の平均値として推計した7.5年という期
間等に基づき、還流防止措置の適用期間に係る法律上の上限として、7年と見積もられています。(なお、廃盤の実態については、企業秘密にかかわる関係など
から、調査には一定の制約がありますが、発売から4年経った音楽レコードでも約9割が、7年経った音楽レコードでも約7割が、なお廃盤や生産中止とはなら
ずに市場に流通しているという調査結果もあります(物流業務を同一の会社に委託している日本レコード協会会員レコード会社11社を対象に実施)。)
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しかし、流通していても、それが必ずしも売れているとは限らず、実際に相当の売上げが期待される期間という観点からも検討が必要と
なりますが、その検討に当たっては、 近年の我が国の音楽市場の実態を収益構造の観点から総体的に捉えると、
極く一部の大ヒット作品によりもたらされる大きな利幅の下支えにより、タイトル数の上では圧倒的に多数を占めるその他の多様な作品が存在することが可能に
なっていると評価し得ること(注1)、また、 還
流レコードとして現に国内で流通している、又は今後アジア諸国等にライセンスを積極的に付与していくことが見込まれるものも、基本的に国内で大ヒットした
作品が中心であると考えられることを踏まえ、対象を大ヒット作品に絞って考察することが適切であると同時に、考察対象となるそれら一部の大ヒット作品につ
いては、当該個別タイトル自体の投資回収の観点から、リリース直後の集中的な売上げが見込まれる期間(以下「初動期間」という。)を考察の対象とするのは
当然としても、そればかりでなく、我が国の音楽市場全体を下支えしている観点から、売上げがある程度落ち着いたと評価し得る時期(以下「安定期」とい
う。)に入るまでは考察の対象として十分に捉えることが、分析のバランス上適切であると考えられます。
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| (注 |
1)
文化庁よりサウンドスキャンジャパンへの委託調査(全国約二千数百店におけるPOSシステムによる実売データから推定される総売上げ。1995年9月以降
発売の約6万タイトルを対象)によれば、50万枚以上の総売上げがあったタイトル数ベースで1%に満たない作品群により、総売上枚数や総売上金額ベースの
約40%が、1万枚以上の総売上げがあったタイトル数ベースで約100%の作品群により、総売上枚数や総売上金額ベースの約90%が生み出されています。
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そこで、実際に還流盤が存在していたり、アジア地域にライセンスされているようなアーティストの大ヒット作品(上記我が国の音楽市場の実態等を踏まえ、
50万枚以上の総売上があるものとしました。)であり、発行からできるだけ長期間を経ていること(注2)などを要素として、代表的なものの売上推移につい
て委託調査を実施したところ、以下の傾向を指摘し得ることが分かりました。 |
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| (1) |
個別タイトルの総売上枚数との相対的な関係からは、その大部分(9割)は発売から概ね1年半程度(初動期間)までで売り
上げ、急激な売行きは一段落すること(注3)。 |
| (2) |
更
にその後の売上推移について、売上枚数それ自体の多寡を個別に考察すると、初動期間における(1)のような収れんの様相とは異なり、その推移は多様であり
(注4)、初動期間の場合と比べ、その安定期入りの時期を一概に特定することは困難であるものの、当該初動期間を超えて数年経てからもなお、週に何千枚、
あるいは年に何万枚という、「看過し得ない程度の売上げ」(注5)を上げる例も見受けられること。
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以上の考察をまとめると、還流防止措置の中心的な対象となるような、我が国の音楽市場全体を支えているとも言うべき大ヒット作品について、総売上枚数の割
合に着目すると、概ね発売後1年半程度の初動期間で大部分が集中的に消化されると言える一方で、売上枚数それ自体の多寡を個別に考察すると、当該初動期間
経過後における売上状況の推移は多様であり、発売後相当程度の年数を経過してなお、看過できない程度の売上げを上げたり、盛り返してくるタイトルも存在す
ることから、対象期間を初動期間のみで機械的に画することは適切ではないと考えられます。
そこで、関係権利者の利益を十分に確保するためには、初動期間経過後も十分な期間を設定する必要があるとも考えられる一方で、関係事業者や消費者の利益
の観点からは、できるだけ短期間とすべきとも考えられるところ、安定期に入る時期について、初動期間のような特定時期の認定は困難であることから、関係当
事者間における利益のバランスを図る観点から、初動期間の「1.5年」と、制度上の上限である「7年」の中間値である「4年」をもって、還流防止措置の対
象となる期間を設定することとするものです。 |